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芥川龍之介「仙人」を書す

芥川龍之介の短編に「仙人」がある。しかも、同じタイトルで3編ある。その中で、今、塾で注目なのが、琵琶湖を舞台にした仙人の話である。
 その仙人は、仙人であるにもかかわらず、ふつう仙人は不老長寿のはずであるのに、長生きすることなく、人並みに癌にかかって亡くなってしまうのである。残した遺言にしても、相続人たちはほとんど守らず、仙人が何よりも大切にしていた「財産」である彼是200もの瓢箪も、いつの間にか、散逸してしまったというのである。
 わずか2ページにまとめられた短編であるが、人並みの人間として生きたこの仙人の潔よさに対比して、遺言で相続人たちを言い聞かせることはできなかったことや、残された財産はいつの間にか散逸してしまったという、いかにも人間界らしい結末が余韻として残るのである。
 そこで、この全文を書にして残してみようと思い立ったのである。瓢箪ではないが、せっかく書いたこの書もいつかは散逸して、なくなることであろうのに。
 奥深い短編小説である。