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№3筆の一生

 書をするものにとって筆は道具であるだけではなく、自分の腕の一部でもある。腕・指先が筆先の感触をしっかり捉えてはじめて、自分の意志が紙に伝えられるのである。

 そして、もう一つ大切なことは筆にも「クセ」があるということだ。調子のいい時もあれば、全然やる気のない時もある。すぐに疲れていうことをきかないこともしばしばである。生まれてからその役目を終える時まで、はげしい気性をみせるやつが多い。これが、人間とナンか似ている。

 今日、私となかなか相性のいい「筆」で作品書きをした。純羊毫の中国製、当初は柔らかな線をみせていたが、長いつきあいの末、多くの毛が抜け落ち、バシバシの硬い毛が残るのみである。調子のいいのは最初だけ、半紙10枚程度、半切3枚のところで、降参された。もう一生の中で「晩秋」の時期にきているので仕方ないのだが、それでも、また違った線をみせてくれた。こいつの生命力には感心するばかりである。

 筆は手作りである。一本いっぽんクセがある。はやくそれを知ってやることが、長いつきあいができる秘訣だと思う。言うことをよく聞いてくれる筆を求め続けたところで、筆の方が先に折れるのが常であろう。

 筆の一生と長く、うまくつきあえるのが「書きびと」だと思う。